映画ソムリエ・東紗友美の「映画を感じる場所でクリームソーダを」その0

映画ソムリエ・東紗友美の「映画を感じる場所でクリームソーダを」

2019-08-28
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映画ロケ地巡りが好きで、度々訪れてきた映画ソムリエの東紗友美さん。今回は、乙女の飲み物・クリームソーダがぴったり似合う、レトロな雰囲気の喫茶店を3店ご紹介します。どのお店も、映画やドラマのロケ地として登場していたり、映画のパンフレットが並んでいたりと、映画の世界にじっくり浸れる場所ばかり。映画の世界に包まれて、キラキラのクリームソーダを味わってください。

Text:東紗友美、Photo:高嶋佳代(さぼうる、喫茶 宝石箱)

胸が高まる、クリームソーダの魅力

暑い夏もそろそろ終わり。
夏の思い出に浸りながら飲みたいのは、どこかノスタルジックなムードが漂うクリームソーダです。

映画ソムリエ・東紗友美の「映画を感じる場所でクリームソーダを」その2
生きる力が今よりもちょっと欲しい時、クリームソーダを頼むとよい――。

自分を守りたい時、大切にしたい時、この地球上でもっとも輝く特別な飲み物“クリームソーダ”を私は頼みます。

私を高揚させる味。少女に戻す味。孤独を好きだと思える味。
家で飲むより、外で飲みたい。喫茶店に愛されたクリームソーダ。

今回は、映画にまつわる場所で、その世界観に酔いしれながらキラキラの炭酸を堪能できるお店を紹介します。

神保町 さぼうるfrom『失楽園』(1997)

神保町 さぼうるfrom『失楽園』(1997)
“秘密をいろどる”ためのクリームソーダ


ひらがなで書かれた柔らかな印象の名前のせいか、店内にはどこかリラックスした表情の人々が笑顔を覗かせています。早すぎる時間の潮流から逃れてきたような人たちが集まる「さぼうる」があるのは、古書の街・神保町。

扉を開けた瞬間から脳内のON/OFFが切り替わるのだから、お店の名前って大事だよなぁと思ってしまいます。
映画ソムリエ・東紗友美の「映画を感じる場所でクリームソーダを」その4
ミレニアムを前に世間で大流行した『失楽園』は、渡辺淳一のベストセラーを森田芳光監督が映画化した作品。ドラマ化でもヒットし、小説の発行部数は300万部を越え、その年の流行語大賞にも選出されました。
ここ、「さぼうる」で主人公の1人である役所広司は、同僚と休息を取っていました。彼は不本意な人事に対する不満を、徒然草の一遍に例えて語ります。
 

“夏果てて、秋の来るにはあらず” ―「徒然草」第155段―

 
その姿には大人の男の色気が漂っていたのが印象的。愚痴も古き書物から引用すれば、こんなにも文芸的な香りが漂うもの……?
今どきの意識高い男子たちには、そんなセリフが思い浮かぶのでしょうか。

このお店で楽しめるクリームソーダは、ほの暗い店内で主役級に輝いていました。秘密を共有したい誰かと来たり、ここでしか話せない内緒話をするのにもってこいの空間です。
◆さぼうる
住所:東京都千代田区神田神保町1-11
電話番号:03-3291-8404
営業時間: 月~土 9:30~23:00(LO22:30)
定休日:日曜・祝日(祝日は不定休)
アクセス:都営地下鉄 新宿線・三田線「神保町駅」A7出口より、徒歩0分
クリームソーダ:650円

千歳烏山 喫茶 宝石箱from『少女邂逅』(2018)

“少女に戻る”ためのクリームソーダ


女子高生のとき、大人ぶってコーヒーばかり飲んでいました。
本当はクリームソーダが飲みたかったのに。あの時、背伸びばかりしていたのはなんでなのだろう? そんなことしなくても大人なんてすぐに来ちゃうのに。

ほろ苦い思い出の宝石箱を広げ、自分との対話にどっぷり浸かるのがここ「喫茶 宝石箱」でのおすすめの過ごし方。
オーナーのナオミさんは生粋の昭和レトロ好き。1970年代~1980年代の少女漫画や当時のアイドルグッズ。そして貴重な映画パンフレットもずらり。まるで小さな博物館のように可愛いアレコレがぎゅっと詰まった空間ではその頃の歌謡曲なんかも楽しめます。

そのコレクションを眺めているだけで2019年のことなんて忘れてしまいそう。少女の頃に好きだったものに触れることで思わぬ自分のルーツを辿ってみたくなったりして……!
このお店は映画『少女邂逅』のスピンオフ作品『放課後ソーダ日和』の第3話に登場。制服とピンク色のクリームソーダを飲む少女たちの会話は、思った以上にセンチメンタルで胸がきゅっとなります。
「飲むタイプの魔法」とも呼ばれるピンクの花(持ち帰り可能!)が咲いた乙女のクリームソーダ。少女時代の懐かしさを噛みしめながら飲んでみてください。
◆喫茶 宝石箱
住所:東京都世田谷区南烏山4丁目18-18 小山マンション102
電話番号:03-5969-8577
営業時間:12:00~18:30(LO18:00)
定休日:水曜日
アクセス:京王線「千歳烏山駅」北口より徒歩約5分
クリームソーダ:600円
※花飾り付きは650円
写真のクリームソーダは「ローズクォーツ(ピーチ味)」

恵比寿 喫茶 銀座from『ノルウェイの森』(2010)

“活力を得る”ためのクリームソーダ


お店に入ってすぐ目に入るのが、クリームソーダや食品サンプルがずらりと並んだガラスケース。
映画『ノルウェイの森』や『新宿スワン』『黒革の手帖』、ドラマにも度々登場するこちらのお店は“喫茶 銀座”なのに、JR恵比寿駅から徒歩約2分の立地。そんな意味ありげなネーミングに、私はどうしても惹かれてしまいます。
タイムスリップや非日常という言葉がよく似合う、このお店の創業は1962年。今日まで50年以上愛されてきました。知っていることを誰かに自慢したくなるようなお店です。

映画『ノルウェイの森』ではワタナベ(松山ケンイチ)と直子(菊地凛子)が久しぶりに再会し、ここで次の土曜日に“電話をする約束”を交わします。直子の繊細さがよく表現されているシーン、とても印象的です。
昼間に訪れれば、店内には明るい日差しがぱっと差し込んできて、読書をするにもおすすめ。流行りの店が立ち並び、大勢の若者たちが行き交うこのエリアで、クリームソーダを味わいながら、自分だけの時間を過ごす……。お店を出る頃には、自分が再生されていくのを感じられるはず。
◆喫茶 銀座
住所:東京都渋谷区恵比寿南1-3-9
電話番号:03-3710-7320
営業時間: 10:00~17:30
定休日:土曜日、日曜日、祝日
アクセス:東京メトロ日比谷線「恵比寿駅」より徒歩2分
クリームソーダ:650円

おわりに

映画ソムリエ・東紗友美さんが案内する、クリームソーダが似合う喫茶店3選、いかがでしたか?

どのお店も、一歩足を踏み入れると、日常から離れた別世界。
夏の終わりを感じに、足を運んでみてください。

◆東紗友美(ひがし・さゆみ)
映画ソムリエとして、テレビ・ラジオ番組での映画解説や、映画コラムの執筆、映画イベントのMCなど幅広く活躍。映画ロケ地巡りも好き。日経電子版では「映画ソムリエ 東紗友美の学び舎映画館」を連載中。

映画ソムリエ・東紗友美さんが選ぶロケ地3選

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