スーパーの袋がタペストリーに⁉ 織物アーティスト・鬼原美希が作品に込めた「世界の歩き方」【前編】~北・南ヨーロッパ~その0

スーパーの袋がタペストリーに⁉ 織物アーティスト・鬼原美希が作品に込めた「世界の歩き方」【前編】~北・南ヨーロッパ~

2020-07-30
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「旅の思い出をカタチにしたい」、そんな気持ちになったことはありませんか? 写真を撮る、日記に書く、心に刻む、香水にするというブランドデザイナーも。いろいろな手法がある中で、いま最もユニークなカタチで思い出を紡ぐ織物アーティスト・鬼原美希さん。彼女が作品に込めた「世界の歩き方」を、前後編にわたってお届けします。

「たびするおりびと」

「たびするおりびと」
鬼原さんは、日常生活の体験や感じた思いを「つづれ織り」という技法で、絵のように浮かび上がらせるタペストリーを生み出しています。

2015年には、「たびするおりびと」として23カ国をめぐる世界一周の旅に挑戦。行く先々で受けた衝撃を、自画像とともに作品に織り込むプロジェクトを始めました。その素材というのが……もっともっと衝撃的なんです!

風船と紙テープとリボン /ストックホルム(スウェーデン)

風船と紙テープとリボン /ストックホルム(スウェーデン)
フィンランド、ノルウェー、デンマークの3カ国と接する北欧最大の国・スウェーデン。中でも最も洗練された街ストックホルムは、14もの島々からなる「水の都」。街並みがお洒落で美しく、訪れる者を惹きつけます。
スーパーの袋がタペストリーに⁉ 織物アーティスト・鬼原美希が作品に込めた「世界の歩き方」【前編】~北・南ヨーロッパ~その3
▲鬼原さんは、この街で参加した「王宮内見学ツアーが思い出深い」と言います
スーパーの袋がタペストリーに⁉ 織物アーティスト・鬼原美希が作品に込めた「世界の歩き方」【前編】~北・南ヨーロッパ~その4
「王制が現在も続いているこの国では、国旗のデザインをとても大事にしていて、街中で本当によく見かけました。現地のデパートで、スウェーデンカラーの青と黄色を使った風船と紙テープとリボンを見つけたので、 素材として選びました」

紙糸や、駅でゲットしたフリーペーパー/ヘルシンキ(フィンランド)

フィンランドの首都ヘルシンキは、1日あれば十分観光できるというコンパクトシティ。大都市を観光するときのような忙しさがなく、街中でゆっくりと穏やかな時間を過ごすことができるのが魅力です。また、北欧デザインのかわいい雑貨店が集まることでも知られています。
▲「トナカイを食べる文化がある北欧の中でも、フィンランドの市場では特にトナカイの肉を多く見かけました」
「この街では、マリメッコの店舗なども入った大きな市場を訪ねたんです。雑貨店で見つけたフィンランドらしさを感じさせる、ちょっとくすんだカラフルな色味の紙糸や、駅でゲットしたフリーペーパーなどを素材にしました」

缶詰が入っていたスーパーの袋/サントリーニ島(ギリシャ)

ギリシャのアテネから飛行機で約1時間、エーゲ海に浮かぶ小さな島サントリーニ。シンボルのブルードームと、断崖に建ち並ぶ白壁の家々の様子はまるで絵画のような美しさ。その風景を一目見ようと世界中から人々が集まります。
▲「現地で白いワンピースと皮のサンダルを買い、それに着替えて街を歩いた」という楽しい思い出が詰まった一作
「青い屋根と白い壁の建物がとても美しい島でした。降り立った日の天気は快晴で、歩道に敷き詰められている石が太陽に反射して眩かったですね。そんな街中のレストランで食べたタコがすごくおいしくて。近くのスーパーで缶詰を買ったら、教会の屋根の色によく似た青いビニール袋に入れてくれたので、それにヒントを得て織り込みました」

市場で食べたメロンの包み紙とミシン糸/カターニア(イタリア)

カターニアはパレルモに続く、シチリア島第二の都市。ギリシャ時代から港町として発展してきました。2002年にユネスコ世界遺産に登録され、今やシチリア一の経済都市に。街の人はファッションのトレンドにも敏感で、 “南イタリアのミラノ”とも呼ばれています。
▲「カターニアで、元気いっぱいの市場に立ち寄ったときの思い出です」
「市場に売っていた野菜や果物は、レモンの黄色やトマトの赤を中心に、とてもきれいで陽気な色合いでした。商人が、メロンを豪快に切って『食べてごらん』と渡してくれたので頬張りながらその包み紙を分けてほしいとお願いしたら、不思議そうに、でも快く分けてくれたので、市場で買ったミシン糸とともに作品に使いました」

ハーブティーの袋と、赤い紙ナプキン/モトリル(スペイン)

モトリルがあるアンダルシア州は、太陽、青空、フラメンコなどスペインを象徴するものが体感できる場所。こちらで有名なのが、丘の斜面に掘られた洞窟にある「サクロモンテ 洞窟博物館」です。
▲「館内にある洞窟式住居の中に織り機が展示してあって、運命的な出合いを感じました 」
「原始的な空間の中で見る織り機は新鮮で、やはり機(はた)織りは人々の生活において営みの原点なのだと感じました。散策していたら、実際に洞窟に住んでいるご家族の生活風景を目撃して、感動的な一日でしたね。その中で買って帰った、スペインの花や果実を使った香りの良いハーブティーの袋と、赤い紙ナプキンを織り込んでみました」

すべての作品を手掛けた鬼原美希さんとは…

鬼原美希さん(写真右)は1986年千葉県生まれで、2012年多摩美術大学大学院テキスタイルデザイン領域を修了しました。儚くも激しい煌めきをたたえた一瞬を、自らをモチーフとして「つづれ織り」の技法によって表現。国内外での展覧会に加え、病院などの空間や結婚式などのウェルカムボードなど、オーダーメイドのタペストリーの制作受注も行っています。
「つづれ織り の作家として活動するアーティストはまだ少ないですが、藤野靖子さんと桂川幸助さんのお二人が代表的かと思います。Instagramなどを見ていると、最近は海外のアーティストが制作過程を早回しで撮っている投稿が人気のようですね」


▼今後の予定は以下の通り
2020年11月、東京のORIE ART GALLERYにて『オリエ30cm×30cm アート展「Rich Seasons II」』を開催予定

※イベントが急遽中止・延期になる可能性があります。お出かけの際は事前に公式サイト等で確認してください。

おわりに

今回は、旅行先での体験を現地の素材を使って、タペストリーに仕上げる鬼原美希さんによる5作品をご紹介しました。次回は、彼女が巡った東・西ヨーロッパでの旅行記と作品をお届けします。

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