今見るべき! 高度経済成長期生まれな中野の“いいビル”【連載第2回】その0

今見るべき! 高度経済成長期生まれな中野の“いいビル”【連載第2回】

2019-08-28
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高度経済成長期に建てられた“いいビル”を求めて街を歩くと、見慣れた風景がいつもとは違って見えるはず。東京オリンピックを前に、どこもかしこも再開発著しい東京の街ですが、その波が来ているのは都心ばかりではありません。今回は中野警察大学校が中野四季の都市になり、駅前も激変した中野駅周辺のおすすめのいいビルをご紹介します。

Text&Photo: 西村依莉

滑り台のような斜面がクール。中野サンプラザ

滑り台のような斜面がクール。中野サンプラザ
中野駅前のランドマーク的存在、中野サンプラザ。1973年に全国勤労青少年会館として開業したこちらの設計は竹橋のパレスサイドビル、新宿NSビルなどを手がけた林昌二氏。大きな滑り台のような斜面が効いたデザインで、都庁の展望室などから中野方面を望んでも存在感を放っています。コンサートホールとしてのイメージが強い施設ですが、宿泊もできるし結婚式場、ボウリング場、漫画喫茶などもあるので中に入るチャンスはいくらでもあります。ホテルの部屋からは見晴らしも最高。一度は宿泊しておきたい! 建て替えか大規模メンテナンスか、今はまだ検討中ですが、近いうちに再整備することが決まっています。中野サンプラザがなくなるにしても変わるにしても、中野駅周辺がさらに変貌を遂げるのは間違いありません。


◆中野サンプラザ
住所:東京都中野区中野4-1-1
電話:03-3388-1151

モザイク画の大家が手がけたロビーの壁は必見。中野区役所

モザイク画の大家が手がけたロビーの壁は必見。中野区役所
中野サンプラザのお隣にある中野区役所は、サンプラザよりも少し前の1968年築。目黒区役所、新宿区役所、中央区役所などかっこいい建築が多い区庁舎ですが、中野区役所も派手ではないけれど素敵なディテールがちょこちょこあるので、中野サンプラザとセットでチェックしたい建築です。
外からだとせり出しているように見えるロビー、その階段と天井のランプ、アクセントになった外階段や休日通用口のジオメトリックなタイルの壁。
今見るべき! 高度経済成長期生まれな中野の“いいビル”【連載第2回】その3
そして特筆すべきはロビーのモザイク壁画です。木立が広がる「武蔵野に想う」というタイトルのこちらは、東京交通会館や地下鉄日比谷駅のモザイク壁、3月に閉館した名古屋中日ビルのモザイク天井で知られるモザイク画の大家・矢橋六郎氏によるもの。いつもパネル展などで隠されているのが残念です。もっとこの壁をアピールして、中野区役所! ちなみに中野区役所も中野サンプラザとセットで再整備事業エリアに。こちらは2024年6月頃に新しい区役所が竣工予定。少なくともあと5年ほどは現在の建物が見られるようです。


◆ 中野区役所
住所:東京都中野区中野4-8-1

蜂の巣のようなファサードが鮮烈! ワールド会館

蜂の巣のようなファサードが鮮烈! ワールド会館
サンモール商店街の東側の飲み屋街の中にある、ハニカムデザイン(正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造のこと)のファサードが特徴的なワールド会館。初代オーナーの台湾人の方がデザインしたそうですが、デザインよりも“中野の九龍城”と呼ばれる朽ちかけた異様な雰囲気に気をとられる人も多いかもしれません。

すぐそばの中野ブロードウェイが完成した翌年の1971年に竣工。当時のブロードウェイにはない機能を持たせたい、ということで、ホテルと飲み屋街から成るビルに。現在立入れる範囲は4店舗が営業中の1階と2階、そして地下のみ。取り壊しは決まっていませんが、オーナー側と店側が係争中とのことなので、いつどうなることかわかりません。一見ものものしい雰囲気ですが、階段の構造や手すりのデザインもステキなのでぜひしっかり見てほしい。2階で営業中の坊主バーでは、このビルの歴史も伺えるので、話を聞きがてらお酒を嗜みに行くといいと思います。


◆ワールド会館
住所:東京都中野区中野5-5-5

住職夫妻の思いが詰まった隠れ名建築、了然寺会館

西武新宿線に乗っていると新井薬師前駅と沼袋駅の間あたりで、川沿いに建つ個性的なビルが見えます。了然寺会館という名のこのビルは、1925(昭和元)年からこの場所に建つ寺の一部。寺社建築のイメージとは異なるモダンなこちらの建物は1973年に建て替えたもの。現住職の高橋清昭氏が「築地本願寺のような雰囲気で」と依頼されたそう。1989年までは幼稚園として運営されていて、その頃はエントランスの階段の下に噴水があり、鯉まで飼っていたというから驚きです。

パッと見の外観のインパクトもさることながら、アーガイル風にペイントした壁や、入り口のモザイクタイルなど、細部のお洒落さも目を惹きます。このモザイク画はタイルの町・岐阜県多治見市で作られたもので、住職の亡き奥様が「入り口にアクセントがほしい」とデザイン。随所に住職夫妻の思いが散りばめられた、密かな名建築です。


◆了然寺会館
住所:東京都中野区松が丘2-2-2

おわりに

中野駅から見えた1950年代の風景・中野駅前住宅の解体も決まり、どんどん変わりゆく中野駅周辺。とはいえ、南口側にはヴィンテージマンションや飲み屋街があるし、北口側のワールド会館がある飲み屋街エリアにも古い雑居ビルが立ち並び、サンモール商店街や中野ブロードウェイも元気いっぱい。1970年築の高級マンション・中野ブロードウェイの商業ゾーンに、サブカルチャーの発信店がたくさん入っているという点においても、中野という街の懐の深さを感じます。新旧のビルや文化が入り乱れ、激変しつつある中野の混沌を楽しんでください。

◆西村依莉(にしむら・えり)
フリーランスの編集者・ライター。東京ビルさんぽメンバー。ファッション誌・ライフスタイル誌を中心に活動しつつ、高度経済成長期のステキな建築や街の風景を日々記録している。グラフィック社から『足の下のステキな床』『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』(共著)、大福書林から『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』(東京ビルさんぽ)が発売中。

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