和歌山県の小さな町に全国から注目を集めているチーズショップがあります。ここに並んでいるのは、ヨーロッパのチーズと和歌山食材を組み合わせた、ここでしか買えないオリジナルのチーズ。銀座の有名レストランのチーズプラトー(カッティングしたチーズをお皿に盛りつけたもの)にもこの店のチーズが並ぶほどで、美しく独創的な品々はチーズ好きを虜にしています。
文/田口真由美
チーズに新たな価値を生み出す“洗練士”
和歌山県紀の川市にある「コパンドゥフロマージュ」は、ネコ駅長で有名な和歌山電鉄貴志川線貴志駅から車で10分ほどの場所にある小さなチーズショップ&工房。チーズのソムリエ「チーズプロフェッショナル」であり、本場イタリアの職人からチーズの“洗練士”として名乗ることを認められたという宮本さんが開いたお店です。
日本で唯一の洗練士としてチーズ作りに励んでいる宮本さん。ヨーロッパ以外ではまだ知る人は少ないチーズの洗練士は、時間や環境、微生物による熟成と共に、さらなる風味や味わいをプラスして新たなチーズを作り上げていきます。チーズをさらに美味しく、完成度の高い一品へと仕上げをほどこす職人が洗練士なのです。
和歌山食材をチーズと組み合わせ、新しい味に
店内のショーケースにはオリジナルのアレンジや熟成がほどこされたチーズがあり、どんな味わいか想像を膨らむものばかり。和歌山県産の食材をチーズと掛け合わせ、地元食材とチーズの魅力を発信しています。「パルミジャーノ燻製赤山椒風味づけ」は、有田川町の名産、赤山椒と組み合わせたチーズ。赤山椒とは“ぶどう山椒”と呼ばれる風味の豊かな山椒を完熟してから収穫したもので、優しい香りと刺激が楽しめます。旨味の強いイタリアのハードチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノにまぶして熟成させることで、日本酒にも合いそうなチーズとなっています。
デンマークで人気のクリームチーズにフルーツのソースを漬け込んだチーズはお店の人気商品。和歌山名産の金柑を使い西京味噌、蜂蜜をアクセントにしたソースとチーズの酸味やコクが相まってデザートのように楽しめます。できたてはもちろん、2、3日置くとまた味わいが変化していくのも魅力です。
ブルガリのレストランでも提供。美しい青色のチーズ
美しい青色をしたキューブ型のチーズは、北イタリアのブルーチーズに白ワインの風味を付け、バタフライピーというハーブで色付けしたもの。こちらのチーズはイタリアの高級ブランド、ブルガリのオフィシャルレストラン「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」でも提供されています。ブルガリのテーマカラーであるブルーをイメージさせるチーズは、まさに洗練士の仕事が光る作品といえるでしょう。