日本最古の歴史書「古事記」に残るヤマタノオロチ伝説の舞台となったのが、出雲地方。その出雲地方にある雲南市は、江戸時代から近世にかけては製鉄業で栄え、その中心地・吉田町(旧吉田村)では、栄華の面影を残す貴重な建造物などに出会えます。さらに、斐伊川の清流を望む山あいには、開湯1300年の歴史を誇る出雲湯村温泉も。奥出雲の原風景の中、神話や歴史ロマンにほっこり浸れる旅へ出かけませんか?
Text:小林智明
歴史的建造物「高殿(たかどの)」で、先人の息吹を感じよう
奥出雲地方では、古くから「たたら製鉄」が盛んに行われていました。たたら製鉄とは、土で築いた炉の中で砂鉄と木炭を燃焼させて、鉄を得る日本古来の製鉄法。
入母屋造の建物・菅谷高殿(写真)は、1921年(大正10年)にその火が消えるまで、170年間もの長きにわたって操業。全国で唯一現存する高殿様式で、国の重要有形民俗文化財に指定されています。足を踏み入れてみると、屋内中央には粘土造りの「たたら炉(製鉄炉)」があり、砂鉄や炭の材料置場や、操業をとりしきる村下が休憩した村下座なども残っています。鉄づくりに従事した先人に、思いを馳せてみては?
◆菅谷高殿(すがやたかどの)
住所:島根県雲南市吉田町吉田4210-2
電話:0854-74-0350(菅谷たたら山内・山内生活伝承館)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:00まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日
入館料:大人310円。
鉄師の仕事ぶりがよくわかる「鐵泉堂(てっせんどう)」
2018年にオープンした吉田町の「奥出雲前綿屋鐵泉堂(おくいずもまえわたやてっせんどう)」も、たたら製鉄ゆかりの施設。松江藩の有力鉄師「田部家」の歴史パネルや、田部家が約100年ぶりに復活させた、たたら製鉄の操業時につくり出した粗鋼「鉧(けら)」が展示されています。
また、不純物元素の含有量が非常に低く、鉄鋼材料として極めて純粋な素材「玉鋼(たまはがね)」で製作したゴルフパターや包丁、靴ベラなども展示・販売。どれも一見の価値があり、貴重ですよ。
◆奥出雲前綿屋鐵泉堂
住所:雲南市吉田町吉田2407
電話:0854-74-0008
開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日、火曜日
三体の岩座(いわくら)は、夫婦円満&縁結びのパワーストーン
「日本初の宮」とされる須我神社。その奥宮として、須佐之男命(すさのおのみこと)をはじめとする三神が祀られている岩座「通称・夫婦岩(めおといわ)。須我神社から山の方へ約2㎞程行くと、八雲山への登山口があり、そこから山道を400mほど登ると見えてきます。
この巨大な磐座は、ご神体のパワースポット。大中小3つの岩から成り、大きい方から須佐之男命、奇稲田比売命(くしいなたひめのみこと)、清之湯山主三名狭漏彦八島野命(すがのゆやまぬしみなさろひこやしまのみこと)であると言われています。立木の隙間から巨岩に陽の光が差し込むと、本当に神秘的に見えるんです!
3つの岩が仲良く寄り添っているように見えることから、良縁結び、夫婦円満、子授けのご利益があるのだそう。須我神社と夫婦岩を一緒に周るとご利益がパワーアップするそうなので、忘れないようにしましょう。
◆須我神社
住所:雲南市大東町須賀260
電話:0854-43-2906
参拝時間:8:30~17:00
古代より沸き続ける1300年の湯治場
最後に出雲湯村温泉を紹介します。こちらは、「出雲國風土記」にも「漆仁(しつに)の湯」と記された1300年の歴史ある薬湯です。さらに、「一たび湯浴みすればすなわち身体和らぎ、再びすすげばすなわち万病消える」との言い伝えもあり、古くから効能の高い温泉として有名です。斐伊川の清流を望むまちなみは、落ち着いた風情や四季折々の景観が格別ですよ。
2019年11月29日には、国民宿舎「清嵐荘(せいらんそう)」がグランドオープン。改装したばかりのピカピカの大浴場、開放感たっぷりの露天の岩風呂で、良質な温泉をぜひ肌で実感してみてください。なお、日帰り入浴は大人550円。
◆出雲湯村温泉 国民宿舎「清嵐荘」
住所:雲南市吉田町川手161-4
電話:0854-75-0031