北海道の日高地方にある平取町(びらとりちょう)。広大な大地に、小さくて可憐なすずらんが無数に白い花を咲かせる初夏の風景は実に見事です。びらとり温泉の露天風呂で大自然を満喫し、上質な「びらとり和牛」などの特産グルメを味わう充実の旅。北海道旅行で平取町を訪れてみてはいかがでしょうか。
Text:小林優子
歴史と文化が息づく北海道・平取町
北海道にそびえ立つ日高山脈の西側に位置する、自然豊かな平取町。源義経ゆかりの伝説が残るほか、先住民・アイヌ民族の精神を受け継ぐ文化の拠点としても広く知られています。特に二風谷(にぶたに)エリアは“アイヌ文化の発信地”と呼ばれており、アイヌ工芸の技術を体験できる「アイヌ工芸伝承館ウレㇱパ」などがあります。
また、平取町と新冠(にいかっぷ)町にまたがる幌尻岳(ほろしりだけ)は、日本百名山にも名を連ねる日高山脈最高峰の山で、登山上級者にも人気。
札幌の中心地には車で約90分で行けて、北海道の空の玄関口、新千歳空港からは車で60分ほどの場所にあり、アクセスのよさも魅力です。
平取町の初夏の風物! 日本一を誇る野生のすずらん群生地
幌尻岳のふもとにある芽生(めむ)には、北海道の初夏の訪れを告げる野生のすずらん群生地があり、日本一の広さを誇ります。鈴のように揺れる真っ白い可憐な花が、約15haもの広大な敷地一面に広がる光景は圧巻。鼻をくすぐる甘い香りが漂います。毎年5月中旬~6月中旬の約3週間のみ一般公開され、5月末から6月初めは“すずらん観賞会”と称して、特産品の「びらとり和牛」などが期間内の土曜日、日曜日の4日間限定で楽しめるバーベキュースペースを設置。毎年、初夏の光景として楽しみに待つ地元の方々はもちろん、遠方からわざわざ訪れる旅行客でにぎわいます。
町を象徴する特産品、甘みに富んだ「びらとりトマト」
豊かな自然に恵まれた平取町では農業も盛ん。トマトは北海道随一の出荷量を誇ります。2012年に商標登録された特産品「びらとりトマト」は、甘みと酸味のバランスがよい「桃太郎」系の品種。温暖な気候のもと、肥沃な大地で真っ赤になるまで大切に育てられ、糖度の平均が5〜6度と甘みに富み、実も堅く、日持ちするのが特徴です。選果場では糖度4%以下のものは出荷しない厳しい基準を設け、信頼のブランド力を築いています。
トマトジュースなど、「びらとりトマト」の加工品は『ニシパの恋人』と名付けたブランド名で販売。“ニシパ”とはアイヌ語で、「紳士・旦那・金持ち」を意味します。ビタミン、ミネラルが豊富でヘルシーなトマト本来の味わいと栄養分、風味を生かした『ニシパの恋人』は、お土産にもぴったりです。
日帰り湯も楽しめるびらとり温泉の宿
芽生すずらん群生地に行った際に立ち寄りたいのは、温泉も楽しめる「美味い宿 ゆから」。日帰り入浴(大人500円)もでき、柔らかく透明な泉質の温泉で、体の芯まで温まると地元の人たちからも評判です。大浴場のほか、銘石の幸太郎石に囲まれた開放感のある露天風呂や貸切家族風呂、サウナも完備しています。
夏期シーズンは大自然を満喫できる敷地内でのグランピングもおすすめ。レストランでは地元食材をふんだんに使った料理を味わえ、「びらとり和牛」の直売所もあります。
「びらとり和牛」は、平取町を代表する特産品のひとつです。気候条件に恵まれた大自然の中で育った上質な黒毛和種で、柔らかく口の中でとろける食感が特徴。濃厚な旨みの赤身肉はもちろん、霜降肉も甘み・旨みが凝縮されてジューシーな味わいです。「びらとり和牛」を扱うレストランもあるので、平取町を訪れたら必ず食べたい逸品ですね。