世界的に見ても「治安がいい」とされる日本にいると、海外旅行には少なからず怖いイメージがあります。では、海外で一番“怖いもの”とは? 写真集『奇界遺産』などで知られる佐藤健寿さんの連載企画。第一回は、海外で危険なものと、その回避術について、話を伺いました。
Text:大高志帆
Interview Photo:中川文作
世界中で遭遇する危険があるのは野良犬
――佐藤さんのように“変わったもの”“不思議な風景”を撮りに行く旅をしていると、一般の人よりもさらに危険な目に遭うことが多いのではないかと思います。実際、旅先で怖い思いをしたことはありますか?
僕はこれまで、撮影で100か国くらいの国を回ってきました。多いときは年に20か国くらい行くこともあります。それで、よく「危険なことも多いでしょう」と言われるんですが……実は強盗なんかに遭った経験は一度もないんですよね。
“怖い”という意味でなら、犬です。日本ではほとんど見かけませんが、特に中央アジアなんかでは野犬がウロウロしています。狂犬病を持っていることも多いので、噛まれたらかなり危険です。
タヒチで廃墟を撮影したときは、気づいたら野犬に囲まれていました。彼らは縄張りを侵されたと思っているから、僕を追い出そうと吠えてきます。噛まれるんじゃないかとヒヤヒヤしましたが、そこは拾った棒でそのへんにあるものを叩いて大きな音を出したりして、なんとか逃げ出しました……って、期待されていたのはこういう話じゃないですよね(笑)。
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――いえいえ。でも、危険な目に遭っていないというのは意外でした。それは、佐藤さんが旅慣れていて、危険を回避するスキルを身に着けているからなんでしょうか。
たしかに、そういう部分もあると思います。男性だということも大きいでしょうね。やはり、弱く見える女性のほうが犯罪に巻き込まれやすいですから。
また、若い女性の中には旅行で“華美”なくらいのお洒落をする人もいますが、あれはやめたほうがいい。どんな格好をしていても、地元の人は外から来た人間に気付くものです。それは、旅行者を食い物にしようとする悪い人間でも同じこと。華美な格好は、あえて旅行者を強調するようなものですからね。
僕に関して言えば、極端に寒かったり、暑かったりという気候的な制限がなければ、基本的にはジャングルでも東京にいるのと変わらない格好をしています。
夜中のタクシーは要注意
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――同じ格好というのもすごいですが、服装には注意せよ、ということですね。ほかにも、見ていて危ないなと感じることがあれば教えてください。
日本人がよく遭う“危険なこと”の代表はタクシーです。安い航空券で旅行をすると、深夜に現地着の便になることも多いのですが、夜中に空港の前で待っているタクシーには“ハズレ”が多い。ぼったくられるだけならまだいいほうで、全然違う場所に連れて行かれたり、人気のない場所で金品を奪われたりすることもあります。
だから、深夜に現地に着いたら、夜のうちに移動しないでください。ちょっとくらいお金がかかってもエアポートホテルに泊まって、朝になってから移動すること。これだけで、危ない目に遭う確率はかなり減りますよ。
様々な国で共通して注意すべきことを教えてくれた佐藤さん。
旅行前に海外のことを少しでも知っておく、その心がけが大切なんですね。
◆佐藤健寿(さとう けんじ)
超常現象や世界の奇妙な現象を調査するサイト「X51.ORG」を主宰。2003年、エリア51で事故に遭ったのをきっかけに、UFOやUMA、ミステリー・スポットや奇妙な人・物・場所を追って、ヒマラヤ、チベット、南米など実際に現地に訪れ、世界中を取材。現在はフォトグラファー/作家として雑誌などで活動。著書『TRANSIT 美しき不思議な世界』(講談社)『奇界遺産』(エクスナレッジ )などが発売中。
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