奈良県の宿「ume,yamazoe」からの贈り物。障がいや病気がある方がもっと気軽に旅を楽しめる世界へ

奈良県・山添村の山里に立つ、古民家を改装した3室のみの宿「ume,yamazoe」。この宿のオーナーである梅守志歩さんは、宿の運営と併せて任意団体「HAJIMARI」の代表を務め、障がいや病気がある方々が、旅や余暇をより楽しめるような環境づくりを行う活動を続けています。この団体の立ち上げのきっかけは、後天性の重度精神疾患を持つ梅守さんの姉、あきちゃんの存在でした。公共の場でも気分によっては大声で騒いでしまうこともあるあきちゃんの障がいと、梅守さんご家族が向き合う日々の中で、周囲の目に違和感を覚えたり、余暇を楽しむ余裕がなくなったり、やるせない思いが積み重なっていったのだと言います。

そんな時、梅守さんの心をほぐしてくれたのが、友人と出かけた旅でした。分岐点となったその実体験のように、過去の自分と同じような境遇にある人たちが「少ししんどい時に浮上するきっかけ」を生み出したい、「家族で楽しめるような場所」を作りたい。こうした想いのもと、障がいや病気のある方とそのご家族が、旅や余暇を当たり前に楽しめるようサポートをする「HAJIMARI」が生まれたのです。

まず初めに取り組んだのが「宿泊招待　HAJIMARI」でした。さまざまな障がいや病気がある方を山里の宿「ume,yamazoe」に招待する活動です。医療ケアが必要な子どもたち、知的障がいや自閉症があり大声を出しやすい方、外見からはわからないものの周囲の音や光に敏感な方など、招待客は多岐にわたります。生まれて初めて、みんなで旅行をしたご家族も多く、穏やかに進んでいく旅の時間の中で少しずつリラックスされているご様子が見受けられました。そんなご家族の姿を前にして、障がいがあるお子様や成人の方もとても良い表情をされ、楽しい雰囲気が伝わってきます。訪れた方々それぞれに嬉しい発見があり、前向きになれるきっかけを少しでも多く作っていける場所を目指して続けている取り組みです。

障がいや病気がある方々に対して直接的な旅のサポートを行う一方で、「HAJIMARI」では宿泊事業者向けの接客研修事業も展開しています。障がいや病気がある方とそのご家族が旅や余暇を当たり前に楽しめるようにするためには、そうした方々を受け入れられる宿泊事業者を増やす必要があるからです。

そこで、本事業では実際に「ume,yamazoe」での接客で得た「障がいや病気がある方をお迎えしやすくなる接客ノウハウ」や「必要なマインドセット」を、旅や余暇に関連する企業や宿泊事業者の方々と研修を通じて共有しています。受け入れ側の体制を整えることで、障がいや病気がある方の旅の選択肢を増やし、気軽に旅を楽しめる環境を広げています。

梅守志歩さんが運営する「ume,yamazoe」は、山添村の集落の頂上にある古民家をリノベーションした1日3組限定の宿。それぞれの設えにこだわった、開放的な3つの客室に加え、フィンランド式の屋外サウナを備えています。

自然に囲まれた山里にたたずむ宿のコンセプトは、「ちょっと不自由なホテル」。場所によっては電波もつながりにくく、コンビニもない少し不便さを感じる場所かもしれないけれど、穏やかな時間の流れの中で、山の上から豊かな自然の表情を眺められる心地よい空間です。“ないもの” が “ある” ことに気づくしあわせを感じてほしい、という想いから、人・宿・食を通じて山里の日常や自然と調和する 「いま、ここにしかない」体験を提供しています。

病気がある方も、障がいがある方も少しほっとできるきっかけを与えてくれる「HAJIMARRI」の活動を通した「ume,yamazoe」での旅なら、これまでやってみたいと思っていたことが実現できるかもしれませんね。


◆ume,yamazoe（ウメヤマゾエ）
住所：奈良県山辺郡山添村片平452
電話：0743-89-1875
部屋数：3室
チェックイン/15:00※最終チェックイン18:00
チェックアウト/11:00
アクセス：［電車］近畿日本鉄道名張駅から車で約17分、［車］名阪国道・山添ICから約10分
駐車場：有