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【日本ならいごとの旅 第4回】古都・奈良でオリンピックカラー「ジャパン・ブルー」を染める

2018-05-04
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2020年東京五輪・パラリンピックのエンブレムにも使われる藍色。サッカー日本代表のユニホームは「ジャパン・ブルー」と呼ばれていますが、実は明治時代に初めて日本に来た外国人がそう呼んだのでした。今、再び世界が注目する日本の心の色、ジャパン・ブルーを染めにでかけてみませんか?


Text&Photo:前田知里

古都・奈良で藍染め「ジャパン・ブルー」の再発見

有史以前から染織に使われてきた人類最古の染料である藍。日本ではその歴史は奈良時代にさかのぼり、飛鳥時代に聖徳太子が定めたとされる位階制度、冠位十二階では藍色は紫に次ぐ高貴な色とされました。有名なのは徳島県ですが、江戸時代から日本各地の集落には「紺屋」という藍染めやがあり、高貴な色というよりは庶民が身に着けた着物でした。明治時代に初めて日本で藍色を目にした外国人が「ジャパン・ブルー」と呼んだそうです。

やがて、戦後、人工的な染料が普及し、藍を染める紺屋は次々と姿を消しました。本藍といっても、実際は苛性ソーダやハイドロなどの薬品を用いて染められたものが多数を占め、灰汁醗酵建ての藍染めは全体の数%程度と言われています。

オリンピックのエンブレムに藍色が使われたことを契機に、時代から忘れ去られかけていた紺屋さんが再び大忙しに。明治時代にラフカディオ・ハーン(小泉八雲)も愛したといわれる「ジャパン・ブルー」が再び世界から注目されています。

古都・奈良県内でただ1軒残る伝統的な笠間藍染では、そんな藍染めを気軽に体験することができます。

奈良の伝統工芸「笠間藍染め」

笠間藍染は奈良県の宇陀市笠間地区で江戸時代から染められている奈良県の指定伝統的工芸品。元々は農家が冬の農閑期に野良着や布団など自分たち使うものを染めていました。いまのような工芸品ではなくて、もっと生活に身近な物だったといいます。

最盛期には奈良県内に25~6軒の工房があったそうですが、現在、この笠間藍染を行っている井上紺屋の4代目の井上加代さんは、県内ただ1人の伝承者。

「とにかく必死でした。」と語る井上さん。

伝統工芸士だった先代の義父が倒れた時、なんとしても、約140年の甕を受け継がなければ、との思いで2年間修業をし、奈良県伝統工芸士の認定を受けられたのだそうです。

藍は微生物の共生が作り出す生き物

工房兼自宅を訪問すると、土間に壷がぎっしり埋められています。
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暑さにも寒さにも弱い藍に住む微生物たち。寒い時は風邪をひかないように火で暖をとるのだそう。そして毎日撹拌して空気をいれ、餌を与えてあげる。まるで、呼吸する生き物を育てるかのようです。

藍染めの原料はタデ科の植物、アイの葉っぱ。アイは他の植物染めの色素と違って水に溶けないため、そのままでは染料になりません。しかし、発酵すると水に溶けるようになり、布を液に漬けると最初は緑色。空気に触れさせると青に変化します。100日かけて藍葉を醗酵させた染料「蒅(すくも)」と、石灰、小麦のふすま、灰汁(あく)、酒などと共に大きな甕に入れて自然醗酵させます。世界中で染色に使われるアイですが、灰汁による発酵で「勝ち色」と呼ばれる深い紺色を出す藍染めは日本ならではの技法なのだとか。

この藍の染料は「作る」ではなく、「建てる」とよばれています。他の植物染めのように煮だすだけではなく、「建てる」ということは、まさに、生き物を育てる過程なのでした。
こちらが「すくも」。

体験してみました

まずは、染めたい模様をイメージしながら、板や輪ゴムなどで布をしぼります。
土間に作られた藍壷に布を何度も浸け、空気にふれさせ酸化させる行程を繰り返します。7~8回繰り返すと深みが出てきます。
最後に天日乾燥させ、仕上げています。

おわりに

明治時代に初めて藍色を目にした外国人が「ジャパン・ブルー」と呼んだ藍染め。昭和20年オリンピックを契機に発展する経済成長の中で忘れられていた藍が、再びオリンピックが契機となり、国内外から注目されています。古都、奈良で唯一伝統を受け継ぐ工房で、日本の心の色、ジャパン・ブルーを染めてみませんか。


◆井上紺屋
住所:奈良県宇陀市室生下笠間620
電話番号:0745-92-3607


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